家庭用蓄電池の価格相場
もしもの時の備えとして、非常用電源を用意したいと考える人も増えています。非常用電源の中でも注目されているのが、家庭用蓄電池です。まだそれほど普及していない家庭用蓄電池ですから、どのくらいの価格なのか見当もつかない人も多いでしょう。今回は家庭用蓄電池の価格相場についてご紹介します。
家庭用蓄電池を導入するときにかかる費用の内訳
家庭用蓄電池は、蓄電池単体で使用する場合と、太陽光発電システムとセットで使用するという、2つの使用方法があります。単体で使用する場合は、電気料金が安い夜間に蓄電し、日中に使用することで電気代を節約できます。非常電源としての使用を考えているのなら、やはり太陽光発電システムとセットが選ばれるでしょう。どちらの使用法でも、家庭用蓄電池を導入するときは、次の3つの費用がかかります。
■本体価格
蓄電池本体を購入する費用です。蓄電池の種類・メーカーによって価格は異なります。
■設置費用
組立設置や基礎工事などの費用です。蓄電池はそのままポンと置くのではなく、ボルトでしっかりと基礎に固定する必要があります。
■電気系統の工賃
蓄電池は、一般的な家電のように設置してコンセントに差せば使えるというものではありません。配線をつなぎこみ、引きこんだ配線を分電盤に接続するなど、電気系統の工事を行う必要があります。
本体を購入する費用はもちろん必要ですが、使用できるようにするための設置工事や電気系統の工事も必要になり、それぞれ費用がかかります。設置や電気系統の工事は、施工業者によって同じ内容の工事でも価格に違いが出てくるものなので、複数の業者に見積もりをもらい、比較検討するのがおすすめです。
【種類別】家庭用蓄電池の相場
蓄電池は大きく分けて4つの種類があります。それぞれの相場と特徴について見ていきましょう。
鉛蓄電池
価格帯は5万円/kWh、主な用途は自動車、非常用電源で、最も古くから使われている蓄電池のひとつです。
メリットとしては、
・安価で長寿命
・メモリー効果がない
・稼働する温度範囲が広い
・過放電すると使えなくなる
などがあります。
デメリットは、
・過放電すると使えなくなる
・使用されている電解液が硫酸なので注意が必要
・大きくて重い
・他の電池よりもエネルギー効率が低い
などがあります。
リチウムイオン蓄電池
価格帯は20万円/kWh、主な用途はパソコンやスマホなど、モバイル機器全般に利用されています。
メリットとしては、
・小型で軽量
・高容量
・高い電圧を供給し、メモリー効果がない
などがあります。
デメリットは、
・過充電や過放電に弱い
・電圧管理がシビアになる
・低温での動作は安定しない
などがあります。
NAS蓄電池
価格帯は4万円/kWh、工場などのバックアップ電源として使われています。世界では他にNAS蓄電池を開発・生産している国はなく、唯一日本の「日本ガイシ株式会社」で開発・生産されている蓄電池です。
メリットとしては、
・蓄電池そのものはそれほど大きくはないが、充電できる電力量が圧倒的に大きい
・構成材料が豊富で長寿命
などがあります。
デメリットは、
・充電時の作動温度が300度前後と高温になる
・融解電解液がナトリウムや硫黄などで、危険物の管理が必要になる
などです。
ニッケル水素電池
価格帯は10万円/kWh、充電式乾電池やハイブリッドカーに使用されています。モバイル機器のバッテリーは今でこそリチウムイオン電池が使われていますが、過去にはこのニッケル水素電池が広く利用されていました。
メリットとしては、
・過充電、過放電に強い
・急速充放電が可能
・環境への影響が少なく安全性が高い
などです。
デメリットとしては、
・寿命が短い(5~7年)
・自己放電が大きい
などがあります。
比較してみると、価格では鉛蓄電池やNAS蓄電池が低くなっていますが、用途やデメリットなどを確認すると家庭用蓄電池には向いていないようです。リチウムイオン電池は高額ですが、小型で軽量、長寿命で安全なことから、家庭用蓄電池に向いているといえるでしょう。
導入後のメンテナンス・保証費用も重要
家庭用蓄電池は、設置したらそれ以降の出費がゼロになるわけではありません。導入後のメンテナンスが必要になりますし、保証も無視はできないということで、導入後には次の費用が必要になる可能性があります。
・メンテナンス費用
・保証費用
・修理費用
この3つです。家庭用蓄電池について調べてみると、蓄電池には本体保証がつけられているとあり、メンテナンス費用なんか必要ないはず、そう思う人も多いかもしれません。確かに本体保証があれば、故障したときでも修理費用や部品交換費用などはかからないでしょう。10年以上の保証がついていればなおさらのこと、導入後の費用について考えることはないかもしれません。
しかし、見た目にはわからず、使用中に気がつかなくても、経年劣化によって内部が傷んでいる場合も少なくありません。家庭用蓄電池は屋内に設置されるものではなく、風雨にさらされることも多い屋外に設置されますから、経年劣化にはより注意しなければならないでしょう。したがって、導入後のメンテナンスは必要だということになります。
メンテナンス費用はメーカーや施工会社によって、有償である場合と保証に含まれている場合もあります。導入時に「余分な費用はなるべくかけたくない」と思うかもしれませんが、いずれ必要になるかもしれない出費に備え、費用を払って保証やサービスをつけることも検討しましょう。
家庭用蓄電池を導入する際は、本体価格だけでなく設置費用や電気系統の工事費用も必要になります。種類別に見る価格相場は、リチウムイオン電池が最も高いのですが、家庭用蓄電池には最も適しています。導入後のメンテナンス・保証費用も重要ですから、もしもの時に慌てないようメーカーの保証やサービスをしっかりと確認してください。